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秦・始皇帝 (秦始皇)


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1962年、日本・台湾。田中重雄監督。勝新太郎、山本富士子主演。

大映がお送りする「なんちゃってアジアめぐり」、今回は台湾(中華民国)・中央電影公司との合作による中国4000年歴史超大作でおます。
国軍兵士(陸軍)総動員(かどうかは知らんが)による人海戦術、若尾文子が神通力(?)で万里の長城をぶっ壊す特撮場面が、見せ場といえるでしょう。

この映画、日本では1962年に封切られましたが、台湾での上映は1965年。
そのわけは、後ほど考察いたしますです。

前回の「なんちゃってアジア」物である『釈迦』に比べると、さらに上映時間が延び延びになってはいるものの、実はわたくし、こちらの方が面白かったのでございます。
それはひとえに、勝新太郎と本郷功次郎の魅力の差(ホンゴー、ごめんね!)だと思うのですが、大志を抱きながらも孤独と焦燥の中でマッドな独裁者と化していく勝新始皇帝の姿が、それなりによく描かれていたからなのですね。

が、中華民国在台湾としては、「始皇帝=毛沢東」のつもりで合作した映画だったらしく(なんせ台湾公開時のコピーは「暴政必亡」)、こんな人間臭い始皇帝じゃあ、国民党政府、特に蒋介石にとっては承服しがたいものであったに違いありません。
それゆえ、3年も後になってからの上映になったのではないでしょうか。
つまり、台湾用に再編集した上での上映だったと考えられます。
『金門島にかける橋』も、同じような目に遭ったようですし。

自分たちのやってたことを棚に上げて、よくこんなもん作らせるよなあ、ほんと。

それから、病死したはずの始皇帝が、本作では、彼を怨む燕の太子丹によって刺殺されたことになっています。
これはどうやら、「太子丹=蒋介石」に見立てている模様(あくまでも推測だけど)。

となると、合戦場面は、国共内戦?
ひょえ~!

そういえば、当時の報道によると、国軍兵士が参加した場面の撮影のさい、外省人兵士から「なんで俺たちが日本人の言うことをきかなくちゃならないんだ」という不平不満が続出、大映スタッフが慌てて釈明に走る、なんてこともあったそうです。

合作って、大変なのよ。

さて、本作は合作とは言いながら、台湾側の役者さんはほんのチョイ役程度の出演で、メインキャストは皆日本側の役者さんが占めています。
ま、大映の場合、それまでは合作映画でも役者は皆日本人、というケースばかりだったことを考えると、少しは進歩したと言えるのかもしれません。

そんな中、台湾版のポスターを見ていてふと気になったのが、「焦姣」(写真下。1943~。曾江夫人。死別した最初のご主人が黄宗迅)の名前。
タイトルバックには何も出てきませんが、どうやら本編には登場する模様。
目を皿のようにして観ておりますと、秦の役人によってむりやり阿房宮へ連れ去られる人妻役で、それらしき女優さんが出てまいりました。

出てたのね。

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付記:市川雷蔵が演じていた荊軻、中国史マニアの皆さまにはおなじみの人物ですね。本作では、中村玉緒演じる美しい妻がいたという設定になっており、「風 蕭々として 易水寒し 壮士ひとたび去ってふたたび還らず」という詩を詠んで秦へ向かう夫を、妻が見送るのでありました。
田中重雄監督は、かつて日本軍政下の香港で国策映画『香港攻略 英国崩るるの日』を撮ったお方。この映画も観てみたいのですが、フィルムが残っていないようです(→フィルムセンターが不完全版を所蔵している模様)。
by sen1818 | 2004-08-12 23:37 | 映画

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by sen1818