人気ブログランキング | 話題のタグを見る

奇譚クラブいろいろ(1)

1968~69年 暁出版株式会社

言わずと知れたSM雑誌。
なにゆえにこのようなものを買ったかというと、異常性愛路線映画で緊縛指導を担当した辻村隆の書いた撮影現場レポートがあるからなのですよ。

初めて『徳川女刑罰史』を観たとき、あまりのエグさに仰天しつつも、「ま、所詮は映画だし、実際の撮影のさいには、適当にごまかしてやっているんだろうな」と、迂闊にも思ってしまったわたくしでしたが、辻村のレポートを読んで己の不明を恥じました。

撮影現場は手加減なしのガチンコ勝負、まさに壮絶な修羅場と化していたのであります。

以下、その中からいくつかトピックを取り出して、ご紹介したいと思います。

「緊急ルポ 『徳川女刑罰史』のスターを縛る」(1968年11月号)
「SMカメラハント 『徳川女刑罰史(秘)銘々伝」(1968年12月号)


『徳川女刑罰史』の拷問及び刑罰シーンの現場レポート。
11月号では、第2話に出てくる尼寺の岩室での拷問場面で、尾花ミキたんを吊るす段になり、太繩の痛みに耐えかねたミキたんが泣き出してしまったというエピソードや、第3話のアップダウン責め(一つの釣瓶に2人の女性を吊るし、捕方が綱を引くと、互いが上下に動く)で、やはり外人モデル(アニタたん)が泣き出してしまったという出来事が記されています。
他にも、首におもりをつけて四つん這いになった外人モデルが、割竹でお尻を叩かれて真っ赤なみみず腫れができたにもかかわらず、この場面を気に入った監督が予告編に挿入するため、同じ場面をもう一度撮り直した、なんていうきつーい逸話も載っていました。
12月号には、第2話のどじょう責め(おぞましい)や磔刑場面、タイトルバックの処刑場面等が出てきますが、圧巻は第1話の海老責めと弓反り責め。
中でも、海老責めの姿勢のまま2時間も耐えた後、台本にはなかった弓反り責めを急遽加えられ、手桶の水を何杯もぶっかけられた橘ますみたんの苦難は、涙なくしては読めません。

「SMカメラハント 東映京都作品『元禄女系図』悦虐と耽美の構成」(1969年2月号)

『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』の撮影現場レポート。
第2話の小人や黒人との絡みや、入浴場面の製作過程等が大変詳しく記述されていますが、葵三津子たんの頑張りに頭の下がる思いがしました。
先だって『元禄女系図』の紹介でも記した、第1話の雪責めの場面で、ますみたんがしきりと痛がって辻村を困らせたという逸話も、ここに出てきます。
第3話では、サド大名とマゾ側室のプレイという設定のため、縛りの過程から見せることになって、小池朝雄に縛りの段取りを指導したりと、辻村も大奮闘しています。
前作では泣き出した尾花ミキたんが、本作では「今日は案外ラクに感じました」と語っているのが、印象的です。
残念ながら、金粉責めのレポートはありませんでした。

「映画カメラハント 『徳川いれずみ師 責め地獄』─残酷美の集大成─」(1969年7月号)

異常性愛路線映画の最高峰『徳川いれずみ師 責め地獄』の現場レポート。
撮影所内で四面楚歌の状態に置かれていた石井組が、ぎりぎりの中であれだけの傑作を生んだことが、これを読むとよくわかります。
また、主役に抜擢された由美てる子たん失踪事件の模様も、克明に記されていました。ただし、完全に監督側に立っての見解なので、てる子たんに対しては、かなりきついことばかりが書いてあるのですが。
彼女に代わって主役を演じることになった片山由美子たんの、痛すぎるエピソードも満載です。
「暴力否定の時代につくるやくざ映画と、性愛路線のエログロ映画と、社会に与える毒はどちらが大きいか-それは私の関与しないところである」なんていう記述に、辻村の痛烈な皮肉が込められているように、わたくしは感じました。(以下続く)
by sen1818 | 2004-04-30 00:29 | 読書

貯まるかな? (管理人名:せんきち)


by sen1818