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戦後秘話 宝石略奪

1970年、東映東京。中島貞夫監督。菅原文太主演。

わたくしがはじめて観た、橘ますみたんの作品。いちおう、「原点回帰」ということで、このたび久々に再見いたしました。

映画の内容その他に関しては、すでにこちらで取り上げていますので、それをお読みいただくとして、今回、ますみたんと賀川雪絵たんの両女優に重点を置いて観たところ、なかなかいいんですねえ、これが。

ますみたんの役は文太演じる主人公・山田の妹・絹子と、山田の仕事上のパートナーである大原(小松方正)の愛人・松子(松井康子)の娘・静子。
絹子は戦後の貧困から売春婦に身を落とし、脳梅毒にかかって死ぬですが、はじめて観たとき、うつろなまなざしでだらしなく口元をゆるめながら(よだれ、たれてます)全身をかきむしっているラリパッパ状態の女優さんが、おかっぱ頭の少女・静子を演じている女優さんと同一人物であると気づくまでに、結構時間がかかった記憶があります。

一方の静子は、深い諦念とどす黒い情念とが心の中に混在しているような女性で、暗い淵を見つめるようなまなざしが、とても印象的です。
山田に思いを寄せながらも、結局は代議士・関(小池朝雄。いつもながらの怪演)の愛人になってしまう、そのときに関が発する殺し文句が「お前にもあの母親の血が流れているんだ」という一言。
静子の母・松子は、大原から山田に乗り換えた後、再度大原とヨリを戻すという「先天性淫婦(どっかで聞いたようなフレーズ)」。つまり、「お前にも母親と同じ、淫蕩な血が流れているんだぞ」ということなんですね。
その一言を聞いて、自らの血を呪いながらも哀しい運命を引き受ける決心をした静子は、関に身を任せることになるのでした。

なんだかせつないわ。

というわけで、1970年以降、出演作品が激減してしまった彼女にとって、これは最上の部類に入る仕事なのではないかと思います。
正直言って、彼女はいわゆる「うまい」女優さんではないのですが、ここではいつもと違う役柄を得て、大健闘していました。
ストーリーは支離滅裂だけどね。

賀川雪絵たんも、マカオの裏町で生きる淋しい売春婦を、哀愁味のある演技で表現しています。
マカオの売春婦といえば、『ならず者』(1964年。石井輝男監督。高倉健主演)の南田洋子演じる売春婦も、淋しかったですねえ。
マカオには、淋しい女がよく似合うのかしらん?
東宝の『無責任遊侠伝』(1964年。杉江敏男監督。植木等主演)でも、マカオ娘の白冰は、植木等に失恋して一人淋しく泣いていましたっけ。

ついでに言うと、この映画での中国語は広東語を使っていましたが、賀川雪絵たんの話す中国語は北京語っぽかったです。というか、「〔イ尓〕上来!(にいしゃんらい!)」という台詞がようやく聞き取れた他は、何を言っているのかがよくわからなかったのですけれど。

付記:この映画の次に封切られたますみたんの映画が、これ。公開時のコピーは、「1年ぶりで、雪絵とますみを脱がせました」。はあ・・・・
by sen1818 | 2004-04-10 01:06 | 橘ますみ

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by sen1818