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阿片台地 地獄部隊突撃せよ

1966年、ゴールデンぷろ・松竹。加藤泰監督。安藤昇、潘迎紫、南原宏治主演。

安藤昇がどこまでもかっこいい兵隊アクション
いわゆる「戦中世代3部作」の1本であります。

中国人捕虜(国府軍兵士)を助けたために、ならず者だらけの「地獄部隊」へ送りこまれた宇留木少尉(安藤昇)は、次第に皆の心を掴み、部隊員のリーダーにのし上がっていきます。
部隊を指揮する辰巳分隊長(南原宏治)は、はじめこそ宇留木と対立するものの、かつて渡世人だったという2人の間には、次第に奇妙な友情が芽生え始めます(キャストとストーリー、「キネ旬データベース」とちょっと異なります)。

さて、そんな宇留木と恋に落ちるのが、潘迎紫小姐(タイトルバックでは、「香港スター ペギー潘(香港ショーブラザース)」と紹介されていました)演じる宗美雲。
美雲は、日本軍による阿片密造に手を貸している宗培元の娘でしたが、そのことを深く嫌悪し、密かに国府軍のスパイとなってその任務を果たしていたのでした。

いやあ、可愛いですね、潘迎紫小姐。

この頃、まだ10代後半だったんですが、初々しい魅力に溢れています。
安藤昇と恋に落ちるってとこが、ちょっとアンバランスな気もするんだけど。
ヘタすると父子に見えなくもないっす。

劇中では、この主人公2人の悲恋に、さらに南原宏治と久保菜穂子たんの悲恋も描かれます。
戦地に赴いた夫の後を追って北支平原にやって来たという久保菜穂子たんは、究極のストーカーですが、『モロッコ』のディートリッヒのイメージもあるのでしょうか、少し。
で、あえなく戦死しちゃった夫の今わの際の状況を知ろうと、上官である南原さんにくっついているうちに南原さんは菜穂子たんに惚れてしまい、でも、手を出せずにいました。
菜穂子たんも菜穂子たんで、何くれとなく面倒を見てくれる南原さんに心が傾いているものの、死んだ夫に義理立てして、自分の心に素直になれないでいます。
そして、この淡い恋も、結局は悲劇に終わるのでした。

南原さん、なんかいい人だったよ。

それに比べると、文太なんかエリート将校役で安藤昇をてってー的にコケにしてるだけだし、まだまだええかっこしいな時代だったのね。

潘迎紫小姐が所属していた邵氏は、いわゆる右派(国民党寄り)の映画会社でしたが、日本軍と戦っているのが八路軍である点や、美雲が正義感に燃える国府軍のスパイである点、あるいは、日本軍の中にもいい人間がいたのだ、という点等、香港側にとっても日本側にとっても面子が保てる設定にしているあたり、まさに「政治的配慮」と言えましょう。

潘迎紫小姐(1949 or 47~。本名同じ)は、蘇州生まれ。4歳のとき、香港へ移住。
1965年、邵氏附属の南国実験劇団を卒業して、邵氏と契約。
本作は、彼女の新人時代の作品にあたります。
1967年、『片腕刀士(獨臂刀)』に出演して注目され(ジミーさんを片腕にしちゃう残酷お嬢の役)、主に武侠映画で活躍しました。
1974年、男優の陳鴻烈と結婚しますが後に離婚、1981年からは台湾のテレビドラマに主軸を移し、テレビ女優として数多くのドラマに主演。
1984年の『神雕侠侶』(中国テレビ)では、小龍女を演じました。
ちなみに、1992年の『一代皇后大玉兒』(中国テレビ)では、劉青雲と共演しています。
現在でも年齢不詳(?)の女優として、テレビ界で現役続行中のようです。

セットが安普請だったり、ストーリー展開が唐突だったり、少々難もあるのですが、祖国に裏切られ、最愛の人を失った男の孤独なパワーが炸裂する、なかなかに見応えのある作品でした。
プリント状態が最悪だったのが惜しまれます。

付記:慰安婦役で、沢淑子たん(加藤作品の常連さん)や藤田弓子たんが出ていました。
劇中、地獄部隊の隊員が、慰安所へ通うために脱出用の穴を掘るというアイデアは、なんだか『大脱出』みたいでした。

(於:ラピュタ阿佐ヶ谷)
by sen1818 | 2004-11-09 23:07 | 映画

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by sen1818