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雷堡風雲 (An Unseen Trigger-Man)

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1965年、香港・台湾。李嘉監督。張美瑶、唐菁主演。

台湾の官製映画会社・中央電影公司が製作した反共映画。
『ホワイト・バッジ ファイナル 史上最大の作戦(證言)』を取り上げたさいに、お約束した分です。
いちおう、香港の國泰機構(電懋の後身)との合作にはなっていますが、全体のイニシアチブは台湾側が取っています。

舞台は日中戦争期の河南省(たぶん)。
雷聲宇の指揮する国府軍遊撃隊には、共産党(八路軍)のゲリラが紛れ込み、部隊の分裂と弱体化を画策していました。
聲宇の息子・驚蟄は、兄の驚龍(魏蘇)が共産党ゲリラの疑いが濃厚な蔡跛子と親密にしているため仲たがいを起こし、ある日口論の末、誤って驚龍を撃ち、死に至らしめてしまいます。
が、この殺人に疑いを抱いたのが、参謀長として中央から派遣されてきた、驚龍未亡人(張美瑶)の従兄・徐志勛(唐菁)。
彼は未亡人の協力を得て、この殺人が実はゲリラの仕業であったことを暴き、今こそ一致団結して共産党ゲリラの陰謀と戦うべきだと説きます。
かくて徐と未亡人率いる国府軍と蔡率いる共産党ゲリラとの対決となりますが、途中から聲宇や驚蟄らも合流した国府軍が勝利を収め、遊撃隊は次なる敵である日本軍と戦うため、決意を新たにするのでした。

1936年の西安事件の後、第2次国共合作が実現、翌37年に日中全面戦争に入った後は、国民党・共産党共に抗日戦に専念することになりますが、実際には仲良く一致団結して戦っていたわけではなく、開戦以降、着実にその勢力を伸ばしてきた八路軍に対して危機感を抱いた国府軍が、八路軍を攻撃するという現象が起こっていました。
その中でも大規模なものが、1941年に起こった皖南事件ですが、この映画もそんな事情を背景にしたもののようです。

しかし、あくまでも国民党に都合のいいように作られているので、八路軍は「抗日戦は国府軍に押し付けておいて、その隙にひたすら自分たちの勢力拡大を図る不逞の輩」になっています。
呼び名も、「土匪」ですし。
この後、日本軍が責めてくるときには「鬼子」の連発で、「大きなお世話だよ!」と言いたくなりました。

ま、ようするに、勇敢な国府軍は、抗日戦の時、外なる敵(日本軍)だけでなく、内なる敵(八路軍)とも戦っていたのだ、と言いたいのでしょうね。

また、共産党ゲリラと戦う国民党軍の女闘士役が、当時「寳島玉女」と呼ばれて人気を博していた美人女優・張美瑶(写真・東宝映画にも出ています)だったのに対し、ゲリラを陰で操る八路軍の女将校役がデブのおばさんという、あまりにあからさまな差別待遇(?)も、おいおいって感じでした。
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しかも、張美瑶自身は生まれも育ちも台湾の本省人で、そんな彼女が大陸の女闘士役を演じているところに、台湾が持つ歴史の複雑さを見る思いがいたしましたです。

徐役の唐菁は平幹二朗系の二枚目男優で、香港でも活躍しました。
が、角度によっては、伴淳三郎にも似ています。
日本では全く知られていない東京ロケ映画『東京尋妻記』(1958年、倉田文人監督。データベースにある美雲節子は、美雪節子の誤り)で、主演しているそうです。

張美瑶の夫役の魏蘇は、去年の東京国際映画祭で上映されたジュディ・オング主演の台湾映画にも出ていた中影のバイ・プレイヤー。

それから、『友は風の彼方に(龍虎風雲)』に出ていた孫越が、共産党ゲリラ役を演じていましたです。

とにかく、いろいろな人が出ていますが、中身はといえば、あくまでも「正義は国民党にあり」という映画なのでありました。
by sen1818 | 2004-08-14 23:38 | 映画

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by sen1818