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『遊撃の美学 映画監督 中島貞夫』 勝手に斜め読み

『遊撃の美学 映画監督 中島貞夫』(2004年、ワイズ出版)を買ってきました。

今回の、新文芸坐における特集上映に合わせて発売する予定だったらしいのですが、最終段階でミスがあったそうで、初日以降、映画館受付で販売されていた本は、その「間違っちゃった版」のみ。
買おうとするたびに、

あ、まだ、正式版が入荷していないんですよ。

と、受付のお姉さんに申し訳なさそうに言われ、今日(って、特集上映の楽日じゃん)、ようやく正式版を入手したのでありました。

帰宅後、さっそく斜め読み開始。
一応、ざざっと目だけ(ほんとに「目」だけ)通しましたが、その段階ですでに付箋だらけに・・・・。

だって、面白いんだもん。

が、残念なことに、見つけちゃいました、校正ミス。

『ポルノの女王 にっぽんSEX旅行』の項(P210~P213)で、クリスチナ・リンドバーグ嬢が本作直前に撮った映画を『現代ポルノ伝 先天性淫婦』としているのですが、これはもちろん『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』の誤りであります。

愛読者カード、出さなきゃ。

あと、これはミスというよりも、「へっ?ほんまでっか?」という疑問なのですが、『戦後秘話 宝石略奪』の項(P140~P142)、香港・マカオロケに関する件の、

ラングーンで港撮ったりね、

という監督のコメント。
いくらなんでも、香港やマカオにラングーンはないはずなので、「こりゃあいったいどこなのさ?」と思いましたです。
聞き手の方の聞き間違いなのか、それとも超強行軍でビルマ(ミャンマー)にも行くつもりだったのか・・・・。

謎です。

そういえば、1987年に雑誌『季刊 リュミエール』に掲載された西本正インタビューの中にも、これと似たようなパターンで、やたらと「重慶ロケ」という言葉が出てきて、「へっ?」と思ったことがありました。
香港でも、鳳凰や長城といった左派(共産党寄り)の映画会社はともかく、邵氏(ショウ・ブラザーズ)のような右派(国民党寄り)の会社が、あの時代(1950~60年代)に中国本土で撮影をするなんてことは通常考えられないので、いまだに正確な地名がわからずじまいになっています。

・・・・話を元に戻しましょう。

さて、斜め読みして、まず興味を引かれたのが、監督のお母さんのこと。
臨月の時にご主人が戦死しているのですね。
うちのおばあ(祖母)と同じです。
そんなこんなで、乳飲み子のみならず5人も子供抱えて頑張るお母さんの姿を見て、監督は「女って本当に強い」と思ったそうです。

余談ですが、うちのおばあも女手一つで子供(うちの父親)育てつつ、戦中いろいろ苦労をして、戦後少し経ってから今度は女の子を産むんですが、相手が妻子ある人だったので結局結婚できずじまい。
自分ひとりで子供たちを育てるために、お店(今川焼き屋→豆腐屋)を始めたのだそう。
わたくしが高校生の頃、このおばあと一緒に中島監督の『序の舞』を観に行ったことがあるのですが、なんだかえらく感動していました。
自分の境遇と主人公母子の姿とを、重ね合わせていたのでしょうね、おそらく。

で、以下は全く極私的な趣味による感想。

この本を買って、何が嬉しいって、橘ますみたんのことをちょこっと褒めて下さっていること。
彼女が二役を演じた『戦後秘話 宝石略奪』のキャスティングは、監督自身の意向だったそうですが、その話題の中で、

二人(ますみたん&賀川雪絵たん・筆者注)とも美人じゃないけど何となく雰囲気があるでしょ、存在感ってものがあったんですよね。芝居はあんまり上手じゃなかったけれども(笑)。

と、語っていらっしゃいます。
「芝居があんまり上手じゃない」という指摘、たしかに図星なのですが、「存在感がある」という表現は、ファンにとってはありがたいお言葉です。

そして、監督の考える「存在感」に関しては、『序の舞』の項(P368~P376)に少しくわしく書いてあります。

だから存在感とか口では言うけれど、存在感っていうのは何だと言うと、顔の表情じゃなくて役者の持ってるふっと出せる雰囲気なんです。それは芝居の上手い人はお芝居で存在感出せるし、お芝居の上手下手以前でも非常に感性的に存在感を持っていて出せるやつもいる。細かいお芝居が上手下手は別にして、そういう存在感が感性的に出せる人ってのは、これはこれでいいわけですよね。それをどう噛み合わせていくかは演出の仕事やから。

ふむふむ。よくわかりました・・・・かな?

それから、斜め読み後に気付いたのですが、見返しにある『日本暗殺秘録』のスナップ、キャプションからは除外されているものの、監督の後方で麦藁帽子被って笑ってるますみたんの姿がありました。
これも嬉しい一枚でした。

あ、そうそう、ついうっかり書くのを忘れていましたが、『にっぽん'69 セックス猟奇地帯』に出てくるM男は、なんと『家畜人ヤプー』の著者・沼正三なのだそうです。

ひょえ~! 

というわけで、今日で特集上映も終わり。
でも、8月7日(土)に緊急オールナイトをやるそうです。
番組は、『にっぽん'69 セックス猟奇地帯』『ポルノの女王 にっぽんSEX旅行』『くノ一忍法』『日本暗殺秘録』の4本。
全部見たけど、切符買いました。
最後の1本、寝ないようにしないと・・・・。

付記:『くノ一忍法』の感想は、また明日。
by sen1818 | 2004-07-09 22:46 | 読書

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