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鉄砲玉の美学

1973年、ATG・白楊社。中島貞夫監督。渡瀬恒彦、杉本美樹主演。

渡瀬恒彦の愛すべきチンピラ映画であり、なぜか無性にラーメンが食べたくなる映画でもありました(チキンもね。食べないなら、テイクアウトで!)。
オープニングからラストまで、食べる映像に始まり、食べる映像で終ります。

渡瀬恒彦は、大阪のしょぼいチンピラ・清。
森みつるたん(『女囚さそり けもの部屋』で、無理やり堕胎させられて死んじゃう娼婦をやってた方)演じるソープ嬢・よし子のヒモみたいなことをやりながら、路上でうさぎを売っていますが、さっぱり売れません。
よって、よし子の部屋にはうさぎの檻が鎮座ましまして、可愛いうさちゃんたちは今日もキャベツをむしゃむしゃと食べています。
で、今度は麻雀仲間から、「犬ならもっと儲かる」とおかしなことを吹き込まれ、

犬を飼って、そいつを増やして儲けるぞ!

と、にわかブリーダーを目指そうとしているところへ(あほだね)、九州進出を目論む組幹部から鉄砲玉に抜擢されて、100万円と拳銃貰って、一路、宮崎へ向かうのでした。

そして、宮崎での日々が始まるわけですが、ホテルの部屋で鏡を覗きながら、

わいは天佑会の小池清や!

と、かっこいい名乗り方を必死で練習する渡瀬恒彦の姿が、むちゃくちゃ安くていいですわ。

で、街に出たら出たで、「まずは女」とばかりに飲み屋の姉ちゃんに粉かけて回り、せっせとジョニ黒振舞って気前のいいところを見せます。
ジョニ黒が高級酒の代名詞だった時代なのですね。

が、この後、兄貴分の指令で難癖つけに立ち寄った店(南九会の幹部・杉町が経営するクラブ)で、杉町(小池朝雄)の情婦・潤子(杉本美樹たん)に一目ぼれ。
はじめは遠くから見ているだけでしたが、杉町の子分(拓ぼん)が清に襲い掛かるといういざこざが発生、これを口実に天祐会が進出してくることを恐れた杉町は、潤子を清に差し出すのでした。

というわけで、二人は一路都城へ。
夢中で潤子とやり続けて、いつの間にか日が高くなっちゃったというのにも笑いましたが、清がかつてコック見習いをしていた頃、悶々とした思いを抱えながら、便所の壁にエッチな落書きをしつつセンズリをこくといった、合間合間に挿入される過去の映像が絶妙でしたわ。

合間に挿入、といえば、よし子がラーメン食ってる映像とうさぎがキャベツ食ってる映像も要所要所に挟み込まれて、これも効果的でした。
森みつるたん、思わず「女(ラーメン食べてる)小池さん」と呼びたくなる怪演です。

しかし、杉町が事態の収拾を図ったことで天祐会は進出を断念、潤子は一人宮崎に戻ります。
何も知らない清は、呑気に自分の誕生祝の料理(特製チキンの丸焼き)なんか作ってにやけていましたが、そこへよし子が現われて事情を説明、清はようやく自分が用済みになったことを知ります。
遊びに来いと電話したホステスたちからも全く相手にされず、やけになった清は大阪にいるとき知り合った女のところへ行き、強引に連れ出そうとするものの、警察を呼ばれてしまい、逃走する途中で警官に発砲して自分も傷を負ってしまいます。
虫の息の清は、潤子と一緒に行こうとしていた霧島行きのバスに乗り込み、そこで息絶えるのでした。
って、けっきょくあらすじ書いてしまったわ。

霧島は、高千穂峰ね、天孫降臨の。
「神さまが降りてきたところ」という潤子の話を聞いて、清がモーレツに行きたがるのですが、たどり着けぬまま、車中で息を引き取ります。
でも、清は、神さまが降りてきたみたいな信じられない日々を過ごして昇天したのだ、とも言えますね。
チンピラは、所詮どこまでいってもチンピラでしかなかったにせよ。

杉本美樹たんは、抑揚のない台詞回しがなんだかアンニュイなムードを醸し出して、美しうございました。
森みつるたんの化け物ぶりに比べると、ちと影が薄い感もありますが。

しかし、松井康子たんにも粉かける渡瀬恒彦って、なんでもありのやけくそ趣味だったんでしょうか。って、康子たんに失礼ね。ごめんなさーい。

(於:新文芸坐)
by sen1818 | 2004-06-30 00:12 | 映画

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by sen1818