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瞳の中の訪問者

1977年、東宝。大林宣彦監督。片平なぎさ、志穂美悦子主演。

大林宣彦監督・・・・。

忘れもしない、あれはわたくしが小学校5年生の時でした。
渋谷宝塚に『八甲田山』を見に行ったわたくしは、そこで本編をも凌ぐ圧倒的な予告編に出会いました。
その映画の名は、『HOUSE』
そう、大林監督の長編デビュー作でした。

当時、イタリアからやって来た『サスペリア』という、ものごっつう怖いオカルト映画(当時はまだ、ホラーという言葉は一般的ではなかったと記憶しています)が封切られて、おりしも日本では、ダリオ・アルジェント旋風(?)が吹き荒れておりました。
そして、この日観た『HOUSE』の予告編も、どうやら『サスペリア』と同じオカルト映画らしい、ということまではわかったのですが、マジなのかギャグなのか判別不可能な謎の迷場面の連続に場内は大爆笑、わたくしも大いに笑かしていただいたのでした。

さて、本作はそんな大林監督の2本目の映画です。
手塚治虫の『ブラック・ジャック』から、「春一番」のエピソードを取り上げて映画化した作品ですが、ピノコならずとも、「アッチョンブリケ!」と叫びたくなるような怪作に仕上がっています。

まずは、宍戸錠のブラック・ジャック。
加山雄三のそれも衝撃的でしたが、宍戸錠も負けていませんね。
顔はアシュラ男爵みたいですし、髪の毛は関口宏状態。
製作年から言えばこちらの方が早いので(加山版は1981年)、「俺の方が元祖なんだぜ」という、エースのジョーの勝ち誇ったような笑いが聞こえてきそうです。

ちなみに、この映画もテレビ(加山雄三版)も、脚本はジェームス三木。
お前が犯人だったのか!

ピノコは子役(どこかで見たような気がするんですが、誰でしょう?)がやっていましたが、台詞は大人が幼児言葉で吹き替えているので、妙にアンバランスでした。
でも、ピノコで一番強烈だったのは、宝塚ですね、何と言っても。

片平なぎさの意中ならぬ眼中の人・峰岸徹もすごかったっす。
あの格好で、「御茶ノ水のクラブでピアノを弾いている」って、ナニ人よ、あんた。
激情にかられてピアノを弾きまくる場面では、腹の底から笑いましたよ。

峰岸徹の元恋人で、峰岸に殺されちゃう理子をやってたのが、『徳川いれずみ師 責め地獄』で、吉田輝雄扮するマッド彫秀によって無理やり鳥人間にされちゃった(琵琶湖に飛び込んではいないが)、ハニー・レーヌ。
なんだかくたびれた人妻になっていました。

フェミニンな悦ちゃん(志穂美悦子)が思ったよりもよかったのが、収穫といえば収穫だったかも。
悦ちゃんに絡む変なおじさんが千葉真一という、おいしい場面もありました。

そんなに悦ちゃんが心配なのかな。

そういえば、千葉ちゃん主演の『直撃!地獄拳 大逆転』でも、悦ちゃんだけは汚れ仕事をしていませんでしたね。中島ゆたかや松井静子は、どブスメイクバリバリだったのに。
「(石井)監督!頼むから、エッコは勘弁してくれ」とでも言ったのかしら?
愛弟子思いなのか過保護なのか。

ラストは、なぜかブラック・ジャックの知ったようなナレーションが入ってジ・エンド。

ところで、ヒロインが角膜移植手術を受けた結果、見えないものが見え始めるというパターンは、2001年の香港・タイ映画『the EYE(見鬼)』においても踏襲されています。
まさかパン兄弟が、手塚治虫を愛読していたはずはないでしょうが、このあたりの一致、なかなか興味深いものがありましたです。

(於:日本映画専門チャンネル)
by sen1818 | 2004-05-24 23:21 | 映画

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by sen1818