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東映「異常性愛路線」映画の惹句(1)

国会図書館へいったついでに、「異常性愛路線」映画の新聞広告を調べてきたので、そこにあった惹句を取り上げてみたいと思います。

ご周知の通り、「異常性愛路線」映画というのは、東映京都撮影所が当時台頭していたピンク映画に対抗すべく打ち出した路線で、別名を「刺激路線」「ハレンチ路線」といい、1968年の『徳川女系図』から69年の『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』まで計9作品が作られ、その全てを石井輝男監督が手がけました。
また、石井監督の弟子である荒井美三雄監督のデビュー作、『温泉ポン引女中』(1969年)もこの路線の延長上に位置する作品です。

当時、東京撮影所の方でも「夜」シリーズや「(秘)〔マル秘〕」シリーズなんていうエッチな映画が作られていましたが、そんなものがすっかり霞むほど、「異常性愛路線」映画の持つインパクトには、すさまじいものがありました。
この気違いじみたエネルギーと大々的な宣伝による観客動員力に世間は仰天、いわゆる「良識ある」人々からの非難が殺到したばかりか、後には撮影所内部からも不満が出て、石井組は四面楚歌の状況に追い込まれてしまいます。
しかし、それにもめげず「行けるとこまで突っ走れ!」と頑張った結果、今日にまで残る数々のユニークな作品が生み出されることになったのでした。

今回取り上げるのは、第3作の『徳川女刑罰史』(1968年)から第6作『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年)まで、計4本の惹句です。
素材として、京都の地元紙である『京都新聞』と、3大紙からは『読売新聞』を選定しました。
ではさっそく、見ていくことにいたしましょう。

『徳川女刑罰史』(1968年9月28日封切)

本作は、「異常性愛路線」映画がいよいよその本性を現したと言える作品で、宣伝もかなり大掛かりなものだったようです。
まず第2話で尼を演じることになった尾花ミキたんが断髪式を行って剃髪、お昼のワイドショーに出演したり、つるつるの坊主頭で銀座を練り歩いたりし、第1話のヒロイン・橘ますみたんも、公開前に『週刊プレイボーイ』誌上で初ヌード(撮影・篠山紀信)を披露しましたが、とどめは、9月24日(火)放送の『11PM』での、「責め地獄」と題した特集。
ますみたん、ミキたん、賀川雪絵たんという主演女優3人に、緊縛指導を担当した辻村隆と大野大阪大学教授が出演、映画の一部を上映した後、拷問に関するお話が入るという構成だったといいます。
そして、この日発行の『夕刊 読売新聞』のテレビ欄下部には、『徳川女刑罰史』のでっかい広告が掲載されています。
その惹句は、下記の通り。

噂以上に物凄い 責めたてる一時間三〇分! 
大胆でショッキング・・・・! 衝撃のエロチシズム大作


広告とテレビ(『11PM』)を使って、観客の期待を膨らませるという手ですね。

さらに公開前日の27日(金)、『京都新聞 夕刊』に掲載された新聞広告(「逆さ磔」その他の写真入り)の惹句は、もっとすごいです。

柔肌に喰い入る処刑の荒縄、苦痛にもだえ血に染まる女囚の群!
責めて責めぬく1時間30分!女責め残酷14刑罰・・・


このような宣伝作戦の結果、本作は1968年度日本映画興行収入第9位に入る大ヒットを記録しましたが、同時に、世間からは大不評を買ったのでした。(つづく)

付記:東京撮影所の「(秘)〔マル秘〕」シリーズは、京都撮影所の「(秘)〔マル秘〕」シリーズの続きだと思います。京撮の「(秘)〔マル秘〕」シリーズには、こんな映画もありました。
by sen1818 | 2004-05-15 21:24 | 橘ますみ

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by sen1818