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怪猫 呪いの沼

1968年、東映京都。石川義寛監督。内田良平、里見浩太朗主演。

鍋島の化け猫映画。1968年のお盆に『怪談 蛇女』と同時上映された、やくざとハレンチの谷間に咲いた仇花のような怪談映画です(詳しい情報はこちら)。

橘ますみたんの役どころは、鍋島直茂(内田良平)の室・おりんの方。直茂の男・千代丸の母です。
化け猫が乗り移った百合(家老〔名和宏〕の妹。三島ゆり子たん)の讒言にだまされた直茂に、切り殺されてしまいますが、死亡後ほどなくして(顔面にざっくりと傷の入った)生首となって再登場、直茂の着物の裾に噛み付きます。
本作のヒロインは前半・御影京子たん(『徳川女系図』で、さんざん酷い目にあった女優さん)、後半・三島ゆり子たん(毛むくじゃらの腕で内田良平に抱きついたりするのに、良平、化け猫だと気づかず。鈍感)なので、ますみたんの登場場面はそう多くないのですが、生首になってからは俄然アップで映りまくります。

生首女優・・・・。

映画自体は、化け猫といっても、猫好きのわたくしには「きゃあ、かわいい」程度にしか思えず、あんまり怖くなかったです。
ヒーローのはずの里見浩太朗が途中であっけなく殺されてしまうのに対して、家臣役の菅原文太がけっこう目立っていました。あんまり侍には見えませんが。
あと、名和宏と三島ゆり子たんの兄妹というのも、なんだか濃いですね。この組み合わせ自体が怪談かも。

この時期、ますみたんは『温泉あんま芸者』、本作、『侠客列伝』、『極悪坊主』、『喜劇 競馬必勝法 一発勝負』、『徳川女刑罰史』と、出演作が目白押しでした。
彼女が『温泉あんま芸者』のヒロインに抜擢されたときの報道(『スポーツニッポン』)には、

・・・・映画の種類はともかくとして、(映画デビューから・筆者注)わずか一年の経歴で主役をつかむのは異例の抜てき。この作品の天尾(完次)プロデューサーは「いままで清純なイメージだった彼女をここらでガラリとかえて、大きく育てたい」という。主役をやれる若手が藤純子一人という東映女優陣に幅をもたせることができるわけだ。

とあり、ますみたんが東映期待のホープだったことが窺えます。
この記事の中でますみたんは、「石井(輝男)監督を信頼して思い切ってやってみようと思います」「いまの映画界で自分中心の映画なんて、なかなかとってもらえない。とくに男性映画の多い東映ではチャンスは少ないものです。(略)ここらで自分のすべてをかけてやっていこうと決心しました」と殊勝なコメントを残していますが、これを読んで、わたくしは、彼女の(その後の)あまりにも短かった女優人生を思い、なんだか切なくなってしまったのでありました。

でも、いたづらにおめおめと生き永らえるよりは、ぱっと咲いてぱっと散る、これもまた一つの美しい生き方なのでしょう、はい。
by sen1818 | 2004-05-01 23:08 | 橘ますみ

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by sen1818