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朝日のようにさわやかに 映画ランダムノート

川本三郎著 1986年12月 ちくま文庫

もう大分前に出た、映画の本。
親本は、1977年筑摩書房刊ですが、文庫化にあたって、『シネマ裏通り』(1979年、冬樹社刊)の一部を加えています。

なぜ思い出したようにこんな本を買ったのかというと、それは橘ますみたんのことが書いてあるから。
川本氏は、ますみたんのファンだったのですね、むかしむかし。

例えば、「日本映画/その歩む所に心せよ」というコラムの中には、

いい映画というのは女優がいい。それも主演というよりワキ役的な女優だ。たとえば日本映画でいえば東映の『悪党ブルース』(69年、鷹森立一監督、宮園純子主演)での橘ますみ。

てな感じで、登場いたします。

その他、「短くも美しく燃え―東映のヒロインたち」では、

わが橘ますみの『悪党ブルース』は、封切当時(69年)見逃がし、同じく彼女のファンである「キネ旬」の酒井良雄さんから素晴らしい映画だとうわさだけを聞かされ、そのたびに見逃した私は、切歯タクワン、いや切歯ヤクワンし、封切後5年以上もたって、浅草の映画館で3本立ての1本として奇跡的に上映した時に、「ゆたか旬報」の編集長・秋本鉄次氏(例の『東映ピンキーバイオレンス浪漫アルバム』で、ますみたんにオマージュを捧げている方です・筆者注)と見ることが出来たのである。実に6年ぶりのめぐり逢いで、浅草の映画館のすみっこにすわりながらこちらはもう彼女が出てくるたびに胸がときめいてしまった。

と、熱ーい文章が綴られ、「ポンコツ・ヒロインふたたび」の項でも、『温泉あんま芸者』への大賛辞が出てきます。

これらのコラムが書かれたのは、1975年頃のことらしいのですが、当時、すでに引退していたますみたんの消息が気になった川本氏は、山口和彦監督(『悪党ブルース』の助監督。後、ますみたんが出演した「ずべ公番長」シリーズの監督も担当)に、わざわざ彼女のことを尋ねています。
といっても、山口監督も詳しい消息はご存知なかったようで、「関西に帰ったらしい」ことだけが記されています(実際には、ずっと東京で働いていたみたいですが)。
そこには、山口監督が語るますみたんの人物像も載っていて、曰く、「アッケラカンとした実にいい子だった」との由。

ますみたんご自身は、1988年の雑誌取材に対して、女優時代の自分は「わがまま放題」で、「ちゃらんぽらんな性格」だったと語っていますが、これは多分に(若い頃の自分に対する)自省の念を含んだコメントのようですから、本当のところは、山口監督が語っていた通りの女優さんだったのだろうなと思います。

山口監督の話を聞いた川本氏は、「ひとり、そうだそうだとうなずいていた」そうですが、わたくしもこの件を読むたびにいつも、「そうだそうだ」と一人うなずいているのであります。
by sen1818 | 2004-04-26 01:12 | 読書

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