博多人形への道 (むりむり) その4

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11月13日(土) つづき
対談の話をもう少し。

この他、羅卡氏は1960年代に香港で公開された日本映画が香港映画に与えた影響についても触れ、石井輝男監督(『ならず者』)の名前をいの一番に挙げておられましたが、この話題が進展することなく羅卡氏の指摘のみで終わってしまったのはとても残念でした。
『ならず者』の香港ロケには邵氏が撮影協力をしていますし(その前の『東京ギャング対香港ギャング』はゲリラ撮影)、端役ですが邵氏の俳優も出演しているので、製作現場でもいろいろ刺激を受けていたことでしょう。
また、以前こちらでも書きましたが、邵氏と東映の合作映画で石井監督がメガホンをとるという企画もあったほどですから(主演は健さん)、もう少し突っ込んだ内容の話が聞きたかったものです。

対談の最後、日本や台湾映画の低迷に関する蔡瀾氏のコメントの中で、蔡瀾氏が実に明快に「映画は娯楽だ!」と断言しておられたのが、妙に印象に残りました。
さすがは邵逸夫の薫陶を受けた人物らしいコメントです。
それから、蔡瀾氏も羅卡氏も西本さんのことを「じっくりと時間をかけて撮る大作、短期間で撮る娯楽映画、そのどちらにもきちんと対応できるカメラマンだった」と評し、そういう人材が今の香港映画界にも求められているのだとおっしゃっておられました。

5年で1本の監督さんの名前が、引き合いに出されていたっけなあ・・・・。

というわけで、おそらく当初は1時間ほどの予定であったところが30分ほどもオーバーして対談は終わり、5分の休憩の後、問題(?)の『香港ノクターン』(写真。『踊りたい夜』のリメイク)の上映に入りました。
魔術師の娘である3姉妹(何莉莉、鄭佩佩、秦萍)の芸道ど根性ムービーです。
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松井修氏は「和製レヴュー映画に宿る悪魔 井上梅次~楽器で戦う音楽映画」(『悪趣味邦画劇場(映画秘宝Vol.2)』所収)の中で井上作品の特徴について触れ、

「芸こそすべて」とする芸術至上的考えと、人間らしい当たり前の生き方とのせめぎ合いを描くのが、井上梅次さんのメインテーマだからだろうと筆者には思える。井上梅次さんの映画には、じつによく、この「芸こそすべて」の不条理な人間が登場する。

と書いておられますが、本作でも3姉妹はそれぞれの恋を諦めて、歌と踊りに生きることを決意します。
特に、長女である何莉莉と恋に落ちるトランペッター(凌雲。少し日活系)は、「芸に生きる人間は人並みの幸せを追い求めてはならない」というあまりにも過酷な掟を自らに課し(正に「芸こそすべて」野郎!)、何莉莉に別れを告げます。
互いの芸才を尊重すれば尊重するほど、男女間の愛はその犠牲にならざるを得ないというわけですね。
いったんは幸せな家庭を築いた次女の鄭佩佩とて例外ではなく、作曲家である夫(陳厚)は飛行機事故で不慮の死を遂げ、彼女は夫の遺志を継ぐべく芸能界にカムバックすることになります。
そして三女である秦萍は、クラシックバレエのプリマの座を捨てて、2人の姉と共により大衆的な歌舞団で活躍する道を選び、恋い慕うバレエの師匠(田豊)とも別れるのでした。

そんな厳しい芸の道に邁進する彼女たちにとって、信じられるのは血の繋がった家族の絆だけ。
よって、最終的にはあれほど嫌っていた浮気なお父さん(蒋光超)とも和解、3姉妹が再び手を携えて華麗なるステージが幕を開けます(ここで唐突にテレビ司会者役で張沖が登場)。
しかし、この一見華やかなフィナーレも、実はハッピーエンドではないところがすごいです。

血の絆だけを信じ、芸一筋に生きた人物といえば、美空ひばりを真っ先に思い出すわたくしですが、そういえば、仕込み満載のドキュメンタリー映画『ひばりのすべて』の監督も、井上梅次監督でした。

でも、監督の奥様って、たしか女優さん(月丘夢路)だったはず。
言行不一致?
ま、いいか。

映画の感想を書いたついでにもう一つ。

服部良一の音楽、何度聴いてもサイコー!
サントラ出してくれ!
(つづく)

付記:最初の写真は、邵氏のファンクラブの機関誌『邵氏影友』の表紙。向かって左が林黛、右が樂蒂。日本の『東映の友』や『東宝映画』みたいな雑誌ですね。
ちょっとコネタ。西本さんのカメラマン第1作である『鉄血の魂』の田口哲監督は、後に台湾へ招かれて台湾語映画(『太太我錯了』)を撮っています。かたや香港、かたや台湾。
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by sen1818 | 2004-11-15 23:01 | しようもない日常