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徳川女刑罰史

徳川女刑罰史_a0012778_23412753.jpg1968年、東映京都。石井輝男監督。吉田輝雄、橘ますみ、賀川雪絵、小池朝雄主演。

えー、ちょっこし前にご紹介しましたが、フランスはパリでの石井輝男監督作品上映を記念して、ひさびさに観てみました。
フランス語タイトル、"Femmes criminelles"っていうのね。

本作は、石井監督による「異常性愛路線」映画の第3作目にあたります。
前作(『温泉あんま芸者』)が軽めの喜劇だったのに対して、こちらはどどんとヘビー級のエログロ大作。
残酷刑罰推進派のサディスト与力・南原(渡辺文雄)と、それに疑問を抱く温情主義の与力・吉岡(吉田輝雄)の対立を軸に、3つの事件をオムニバス形式で描いていきますが、2人の対立なんて実はどーでもよくて、これでもかというほどの衝撃場面がてんこもりになって登場します。
公開当時、成人映画ながらその年の日本映画興行収入第9位というヒットを記録し、1972年には再映もされました。
しかしながら、良識ある世間から(だけでなく撮影所内部から)は大ヒンシュクを買ったのでした。

橘ますみたんは、第1話に登場。
テーマは、ずばり「近親相姦」。
18歳になる町娘・みつ(ますみたん)は、親代わりである大工の兄・新三(吉田輝雄)と、ささやかながらも幸せに暮らしていました。
しかし、みつに懸想した呉服屋のエロ旦那・巳之助(上田吉二郎)は、大工仲間の権蔵(沢彰謙)と勘太(簑和田良太)を買収、3人で共謀の上事故を装って新三に大怪我を負わせます。
巳之助は新三のために番町の高名な医者(芦屋雁之助)を呼び、医療費も負担して恩を着せ、自分の妾になるようみつに迫ります。
巳之助の強要を一度は拒んだみつでしたが、「兄がどうなってもいいのか」と脅され、仕方なく身を任せるのでした。
みつが犯されたことを知った新三は激怒、巳之助を殺そうと思うものの、身体の自由が利かず、それもできません。
みつを妹としてではなく、1人の女性として愛していた新三は、自分の思いをみつにぶつけ、その夜2人は結ばれます。
しかし、2人の関係はやがて巳之助の知るところとなり、口止めと引き換えにみつは新三の目の前で陵辱されてしまいます。
犯される妹の姿をじっと凝視する新三・・・・。
その後、思いつめた新三は自らの首に刃物を突きたてて自殺を図り、みつは必死で兄を助けようとしますが、兄の目に巳之助に陵辱されたときと同じ暗いまなざしを感じとったみつは思わず刃物を引いてしまい、新三は失血死します。
みつは兄殺しの容疑で捕まり、居合わせた巳之助も共犯とされてやはり捕まります。
取調べにあたった南原(渡辺文雄)は、新三とみつが畜生道に堕ちていた(近親相姦の関係にあった)と巳之助から聞き、みつの自白を引き出そうと厳しい拷問を課しますが、みつは兄に恥をかかせまいと決して口を割りませんでした。
ところが、お白洲で裁きを担当した兄に生き写しの与力・吉岡(吉田輝雄・二役)の優しさに触れ、みつは全てを告白して兄の許へ行くことを決意、自分が兄を畜生道に誘ったと罪をかぶり、水磔の刑に処せられるのでした。

いつもながら(?)、どこまでも悲惨な話ですね。
ですが、上田吉二郎がますみたんを犯すところでは、上田さんが嫌がるますみたんに、

かめへん、かめへん、かめへんちゅーねーん!!!

とか言いながら着物の裾に手を突っ込むもんだから、つい笑いが・・・・。
そんなとこで、わらかさないで下さい。

徳川女刑罰史_a0012778_2342312.jpgさて、このエピソードの見せ場は、なんといっても後半の拷問場面にあります。
「海老責め」という実際に存在した拷問(お写真)と、辻村隆(緊縛指導)オリジナルの「弓ぞり責め」ですが、「海老責め」なんかこの姿勢で2時間も放置されていたそうで、ほんまもんの拷問ですね、それじゃ。
でも、痛みに耐える苦悶の表情が、なんともエロティックだったりします。

ついでに言うと、「弓ぞり責め」は台本にはない設定で、監督が急に思いついて辻村が考案したもの。
水をぶっ掛けるアイデアも、監督の閃きだそう(鬼だね)。

ラストは、浜辺での逆さ磔。
小柄な彼女の身体が逆さまになり、頭のてっぺんすれすれまで波がざっばーんと打ち付けて、ちょっと痛々しかったです。
で、やがて満潮になって息が出来ずに絶命。
誰が考えたんだか・・・・。

ところで、このおみつちゃんの水磔、処刑にかこつけて自らの命を絶ち、兄の後を追ったわけで、「兄妹時間差心中」と言ってよい類のものでしょう。
「兄妹近親相姦の末の心中」というモチーフは、この後、『恐怖奇形人間』の「人間花火」に受け継がれることになります。

あ、そうそう、最後にますみたんが「兄さーん!」(「おかーさーん!」じゃなくて)と絶叫しますが、ここでもつい笑ってしまう不謹慎なわたくしなのでした。

第2話は、尼寺における嫉妬渦巻く女の犯罪。
尼レズ場面(賀川雪絵たん・白石奈緒美たん)での「付けまつげかさかさ愛撫」には、爆笑。
おそらく「異常性愛路線」のレギュラー女優中、もっとも酷い目に遭ったであろう尾花ミキたんが、ここでもとんでもない拷問を受けまくります。
有名なのは「どじょう責め」ですが、一応女であるわたくしとしては、「とうがらし責め」の方が痛かったです。
が、演じている女優さんの中には、「とうがらし責め」がどういう意味を持つものなのかをわかっていらっしゃらない方もいて、

赤唐辛子なんて、おうどんにふりかけるものだと思っていたけれど、これをどこへ入れるのかしら?

と、おっしゃったとか。
そんないたいけな娘さんが、あんな恐ろしい芝居をしていたのですね。
賀川雪絵たん演じる玲宝が、愛する春海(林・エロ将軍・真一郎)の首を切り落とし、その生首を愛しそうに愛撫する「サロメ」ばりの場面(谷崎潤一郎の『武州公秘話』も想起させますね)には、思わずうっとりいたしました(あぶない?)。

第3話は、サディスト与力・渡辺文雄とマッド刺青師・小池朝雄のガチンコ対決。
一応、沢たまきオネエも、少しだけですが出てます。
ちょうど『地獄変』を思わせる内容に、「超豪華パツキン拷問ショー」がおまけで付いてきます。
地獄の邏卒の姿を彫りたいと思った彫丁(小池朝雄)が、ついには南原を脇差で刺し、その鬼の形相を女(三笠れい子たん)の背(というより尻でした。背中は別の刺青で満員)に彫りこむのですが、そのときに言う台詞が素晴らしい。

人を懲らしめるということは、自分も苦しむということなんだ。
地獄というところがどんなところか知らねえが、他人様ばかり苦しめて、てめえが苦しまないでいい、そんな野郎がいていい道理がねえ!

互いに苦しみを共有することこそが、真の愉悦へとつながる-。
今後、肝に銘じます。
でもこの台詞、そっくりそのまま監督さんに送りたいような気も・・・・。

で、彫り上がった邏卒の顔がまたいいんですよねえ、絵金の残酷絵みたいで。
小池朝雄がせっせと三笠れい子たんの肌に墨を入れるところは、並のセックス・シーンなんかよりもよっぽどエッチです。

吉田輝雄は、いつも遅すぎる到着。
収拾がつかなくなってから出てきて、「なんてことだ」と悩みながら事後処理に励みます。

とにかく、いつ観てもこの映画、「すげーもん見せられちまったなあ」という気分にさせられる映画でございます。

付記:先だって渡辺文雄が亡くなったとき、この映画の一場面を(テレビのワイドショーで)流して欲しかったなあと思いましたが、そんなことをしたら、お茶の間からの抗議殺到は必至でしたね。
by sen1818 | 2004-09-17 23:49 | 橘ますみ

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by sen1818